緊張型頭痛の治し方まとめ。偏頭痛とは違うポイントに注目
昭和の映画やドラマに出てくる頭痛もちのおばあさんを観たことはありますか。こめかみの四角い絆創膏が特徴的でした。あの絆創膏の下には米粒や小豆、時には十円玉を入れていたそうです。
そこにもし梅干しが入っていたら、おばあさんの頭痛は緊張型頭痛です。
梅干しに含まれたクエン酸が血行を促すから緊張型頭痛に効くのです。頭が痛いからといって安易に頭痛薬を使わなかった時代、こめかみに貼りつけた梅干しはれっきとした緊張型頭痛向けの対処法でした。
この記事では、梅干しの貼り薬は登場しませんが、緊張型頭痛の治し方を紹介していきます。
あなたの頭痛は本当に緊張型頭痛?タイプによって真逆の対処になるので注意
頭痛には、よく知られている偏頭痛、群発頭痛、そして、これから紹介する緊張型頭痛のタイプがあり、それぞれのタイプで治し方が違います。
あなたの頭痛は本当に緊張型頭痛ですか?
- 頭を締めつけるような鈍い痛みが毎日起きる
- 痛みは軽度から中程度で日常生活に影響を及ぼすほどではない
- 首や肩のこり
- 眼精疲労
- ふわふわとしためまい
- 全身のだるさ
偏頭痛との大きな違いは、偏頭痛の症状には吐く、光がまぶしい、音に過敏になる、動くと痛みが強くなる、などがあり、緊張型頭痛にはそれらの症状は見られないことです。
近年、緊張型頭痛と偏頭痛を併発する人が増えています。また、偏頭痛の患者が加齢によって緊張型頭痛まで発症する場合も少なくありません。
併発するタイプでは偏頭痛を優先するため、その対処法として、静かに休むことを選択します。治療薬も偏頭痛の予防薬が中心になりますが、これが功を奏して、緊張型頭痛が軽減されるケースもあります。
緊張型頭痛と偏頭痛、これらの診断は専門医でも間違えやすく、偏頭痛なのにあやまって緊張型頭痛と診断された経験がある患者は8割に上ります。肩こりは緊張型頭痛の特徴ですが、偏頭痛でも発作が起きる2時間前に肩こりが生じるので判別しにくいのです。
くりかえしますが、緊張型頭痛と偏頭痛とでは対処法がちがいます。
緊張型頭痛の場合は首や肩を温め、体を動かすようにしますが、偏頭痛では冷やすことと安静にすることが求められ、全く逆の対処法となります。
緊張型頭痛の解消にはこりをほぐして血行をよくするべし
ずっと同じ姿勢でいると、肩や首の筋肉が緊張して血管が収縮します。また、不安や悩みなどのストレスを抱えているときも血管は収縮し、血行不良が起きます。
肩こり頭痛とも呼ばれる緊張型頭痛はこうして引き起こされるのです。
緊張型頭痛を治すには、こり固まった筋肉をほぐして血液の循環を良くする必要があります。頭痛が始まったら、
- 体を動かすこと
- 体を温めること
をやってみてください。痛みが和らぐはずです。
ストレッチなどで体を動かす
不自然な姿勢、無理な姿勢を長時間とっていませんか。仕事のデスクワークや勉強などで机やパソコンに向かっていると、肩や首、頭に負担がかかります。次のポイントに注意して、なるべく同じ姿勢を続けないようにしましょう。
- 姿勢を正しくする
- 休憩を適度に(目安は1時間に1度くらい)とる
- ストレッチをする
休憩しているときに深呼吸や軽いストレッチをするのもよいでしょう。ストレッチの方法については後述します。
デスクワーク中に緊張型頭痛に悩まされる人は、いま一度、自分のすわっている姿勢を確認してみてください。負担にならない正しいすわり方とは、次のようなものです。
- 背筋を伸ばす
- 椅子に深くすわり、背もたれにお尻をつける
- 背中と椅子の隙間にクッションなどを入れて首筋を伸ばす
- パソコンに向かう場合、視線の先は10度くらい下になるようにする
睡眠中の環境は守られていますか。枕が高すぎたり、軟らかすぎたりすると、首や肩の筋肉が引っ張られます。枕は自分に合うものを選ぶことが大切です。
では、血行の改善に役立つストレッチ体操を紹介します。仕事中や勉強中、椅子にすわったまま短時間で実行できて便利ですから、ぜひ試してください。
ただし、頭痛が激しいときや熱を伴っているとき、また、偏頭痛の発作中にはストレッチや体操は控えてください。
- 正面を向いたまま、両腕を胸の高さまで上げる
- 頸椎(けいつい)を軸にして水平にした腕を左右に大きく振る
腕の力を抜いて2分間行ってください。
- ひじを軽く曲げて、肩を中心に前後に回す(6回ずつ)
コツは、前に回すときはリュックサックを背負う動作、後ろに回すときは服を脱ぐ動作をイメージすることです。
これは埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センターの坂井文彦センター長が考案した頭痛体操です。
他にも次のストレッチがあります。
- 両足をそろえて椅子に腰かけ、顔を正面に向いたまま肩を左右交互に前に突き出すようにして体を回す。
- 浅く腰かけて脚を前に伸ばし、肩の力を抜いた状態で、首をゆっくりと前屈する。
- 5~10回行う
- 両肩を上げてからストンと自然に落とす
- 10~20回行う
- 頭に左手をのせて首を左側にゆっくり倒す
- 右側も同様にして、それぞれ5~10回ずつ行う
体を温め、冷やさない工夫をする
体を温めて血行を促進するとこりや痛みが解消されます。最適なのは入浴、ぬるめのお湯にゆったり入っていると全身を温めることができます。
冷房に弱い人はショールやひざ掛けを用意するなど、体を冷やさない工夫をしておきましょう。
こりがひどい患部は温湿布やカイロで温めるようにします。レンジで加熱した湿りタオルを首まわりにかけて、そのタオルをドライヤーで温めると血流の回復と同時にリラックスの効果も期待できます。
頭と首の境目、首後ろの筋に指をあて左右に倒すストレッチも効きます。
ここには天柱(てんちゅう)というツボがあり、これを押して刺激すると、頭痛、肩こり、目の疲労にもよいのです。
ただし、頸椎に問題がある人は医師に相談してください。
頭痛外来を受診する
体を動かしたり温めたりする対策をとったのに、さっぱり痛みが軽減しないという人は、もしかしたら歯のかみ合わせやメガネ・コンタクトレンズの不具合が原因ということも。思い当たる節があったら念のためチェックしましょう。
場合によっては、頭痛を専門とする頭痛外来などに相談した方がよいかも知れません。頭痛以外の病気、例えば頸椎症や首の合併症などをわずらっている可能性もあるからです。
偏頭痛を併発しているケースも多く、そうなると対処法が変わってくるため、頭痛の種類を見極めることは重要です。
薬物による治療
緊張型頭痛には、ときどき頭痛が起きる反復性緊張型頭痛とずっと頭痛が続く慢性緊張型頭痛があり、反復性緊張型頭痛なら市販薬の鎮痛薬で治ります。一般的に、このタイプには治療は不要です。
慢性緊張型頭痛には市販薬は効き目がうすい上に、長く続く痛みに任せてずるずると長期に服用してしまう内に、薬物乱用頭痛になったり胃腸に負担がかかったりするリスクがあります。要注意です。週に2、3回以上の使用は避けましょう。
首や肩のこりがとてもつらい重度の場合、医療機関では筋肉の収縮を弱める筋弛緩薬や循環改善薬などを用います。また、精神的ストレスがひどい人には心療内科や精神科が紹介され、そこで不安を抑える抗うつ薬や抗不安薬を処方されることがあります。
患者によって痛みのきっかけや症状が異なり、対処法も変わってきます。いずれにしても薬は根本的な治療法とはならず、あくまで一時的な処置と心得ておきましょう。
むしろ、日常的にリラックスできる方法を見つける方がこの頭痛には役立つのです。
自分に合ったセルフケアを見つける
緊張型頭痛の痛みは身体的ストレスや精神的ストレスがきっかけで起きます。ストレスを生み出す環境を改善してストレスをたまらないようにすることが最善の策です。
痛み自体がストレスとなってさらに痛みが悪化する悪循環は避けたいところです。痛みがいつまでも続くと、次第に気分がふさいでうつに近い状態にもなります。こうした状態を放置すれば慢性化して治りにくくなります。症状が軽いからと放置せずに早めに対処しましょう。
緊張型頭痛を治すポイントは、ストレスをためないように発散してコントロールすることです。痛みがひどいときの対処法とあわせて、自分なりのリラックス法やエクササイズなどの予防策を用意しておくと安心です。
ストレスを解消するには人それぞれのやり方があります。参考までにいくつかの方法を紹介します。自分に合ったセルフケアがあったら、ぜひ生活に取り入れてみてください。
適度な運動を日常に取り入れる
生活の中で運動を習慣づけることが大切です。
- こり防止に最適なウォーキングを1回30分、週3回を目標に行う
- 筋トレやストレッチで背筋・腹筋を鍛える
- 水泳、ジョギング、サイクリングなどを体力や体調に合わせて行う
- ヨガの呼吸法も有効
入浴でリラックスする
ぬるめ(38~40度)の湯にゆっくりつかりましょう。半身浴やハーブオイルの活用で血行がさらに良くなります。入浴前かシャンプー時に頭皮やツボをマッサージするのも効果的です。ただし、偏頭痛の徴候がある場合は、シャワー程度にした方がよいです。
マッサージやツボ押し、指圧はこりをほぐすのに役立ちます。入浴時に限らず、試してみましょう。
ハーブを取り入れる
コーヒーや紅茶は血管を拡張するには有効ですが、神経を興奮させることもあります。ハーブティーはカフェインレスでリラックス効果が高い飲み物です。適度なアルコールも血流によいですが、大量飲酒は厳禁です。
冷房で体が冷えたら生姜ドリンクや適量のカフェインを。ハーブや精油のアロマ効果が痛みを緩和するので、外出時にアロマおしぼりやアロマスプレーを用意するとよいでしょう。
リラックスする時間を持つ
とにかくひと休みして気分転換を図りましょう。
- ストレスのかかる状況から離れる
- 楽しいことや趣味に没頭する
- 気の合う人と話をする
- よく眠る
緊張型頭痛は日常の工夫で改善できる
緊張型頭痛を治すには血行不良を改善する必要があることや、その対策となるさまざまな方法を説明してきました。ストレス解消法など、案外、簡単に取り組めることではないでしょうか。
冒頭の梅干し貼り薬は、絆創膏にかぶれやすい人にはお勧めできませんが、今でも現役の緊張型頭痛限定の対処法です。びわの葉もこの頭痛に効き目があるとされています。身近にびわの木があったら、葉の表側を患部に当ててみてはいかがでしょう。