【頭痛を治す漢方薬】原因や症状ごと、本当に自分に合ったものの選び方

日本人の3人にひとりは慢性的な頭痛持ちと言われています。頭痛の原因は人によって異なりますが、漢方では個人の症状や体質に合わせた薬を選ぶことができますよ。

色々な種類があるので、専門医に診断してもらい処方してもらうのがいちばん良いですが、どんな漢方薬がどのような人に適しているのか、参考にしてみてください。

漢方医学による頭痛の治し方とは?本当に効果があるの?

慢性頭痛には片頭痛や緊張型頭痛などがあります。片頭痛はズキズキとした痛みがあり、吐き気などを伴うこともあります。緊張型頭痛は頭全体を締め付けられるような痛みで、肩こりや姿勢の悪さ、疲れやストレスが原因になることが多いです。

西洋医学では、トリプタン製剤や鎮痛剤などで痛みを抑えますが、漢方医学では痛みの原因となっている身体を調整することによって、治療をします。

頭痛が起こる時、身体の血液や水分のめぐりが悪かったり、胃腸の調子が良くなかったりと、なんらかの身体の原因があると考えます。そして、その症状を改善させる漢方薬を使うことで、頭痛を良くしていきます。

まずは「葛根湯」の使用がオススメ

葛根湯は最も親しまれている漢方薬のひとつです。風邪の初期症状や頭痛・肩こりなどに効きます。「傷寒論」という漢時代の原典にも書かれている処方です。

葛根湯には7つの生薬が含まれています。

  • 葛根(カッコン)
  • 麻黄(マオウ)
  • 桂皮(ケイヒ)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 大棗(タイソウ)
  • 生姜(ショウキョウ)

このうち、葛根・芍薬・甘草などが、筋肉の凝りを取り、桂枝が胃腸の調子を良くしたり、血液のめぐりを良くする効果があると言われています。つまり、葛根湯は片頭痛よりも緊張型頭痛の方に向いていることが分かります。

さらに頭痛の原因に注目すると、他にも適した漢方薬はたくさんありますので、次に頭痛の原因となる症状を改善させる漢方薬を、ご紹介していきます。

「冷え」から来る頭痛を治す漢方薬

身体が冷えて頭痛になりやすい方に向いている漢方薬は、主に4つあります。

1.呉茱萸湯(ごしゅゆとう)

身体の血液や水分のめぐりが悪いために、冷えやすい方の片頭痛に効きます。身体の中心にある胃腸を温めるので、胃腸の弱い方や、片頭痛に伴う吐き気や嘔吐といった症状のある方に適した漢方薬です。

2.当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅしょうきょうとう)

「四逆」の「四」は四肢、「逆」は「逆冷」を意味し、四肢の末端から冷える方に向いています。しもやけになりやすい方など、手足の冷えに伴って頭痛などの痛みが出る方に適した漢方薬です。

3.五積散(ごしゃくさん)

上半身がのぼせ、下半身が冷える方に適した漢方薬です。血行や水分循環を改善し、また胃腸の働きを高めて、体の冷えや痛みを治すので、頭痛に限らず、腰痛、関節痛、神経痛、生理痛、胃腸炎などの改善にも使用されます。

なお五積散には、 多くの生薬が含まれています。

  • 蒼朮(ソウジュツ)
  • 陳皮(チンピ)
  • 当帰(トウキ)
  • 半夏(ハンゲ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 桔梗(キキョウ)
  • 枳実(キジツ)
  • 桂皮(ケイヒ)
  • 厚朴(コウボク)
  • 芍薬(シャクヤク)
  • 生姜(ショウキョウ)
  • 川芎(センキュウ)
  • 大棗(タイソウ)
  • 白芷(ビャクシ)
  • 麻黄(マオウ)

多くの生薬が入っていることで、色々な症状に効くのですが、かえって負担がかかる場合もあります。そのため五積散は、ある程度の体力のある方の使用をすすめます。

4.川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)

川芎という生薬は血流を良くして整える働きがあり、どのような体力の方にも使われる漢方薬です。急に頭痛が出た時の頓服薬として使用されることが多いです。また、寒気のある風邪の初期や、更年期障害の改善にも用いられる漢方薬です。

「ストレス」から来る頭痛を治す漢方薬

「ストレス」からの症状を改善させて、頭痛を良くする漢方薬は、主に4つあります。

1.抑肝散(よくかんさん)

漢方医学で考える「肝」には、神経や感情をコントロールする役割があると考えられており、その「肝」を抑える効果のある漢方薬が抑肝散です。

血液のめぐりが不安定になることで、イライラして緊張している身体をほぐすことによって、頭痛を改善させたり、また気持ちを落ち着かせたりする効果があります。

2.加味逍遙散(かみしょうようさん)

漢方医学では身体の中心にある胃腸や元気の源と、血液のめぐりのバランスをとるために、漢方薬を用います。

血液のめぐりは良くても、気持ちが沈んでいると、かえって疲れやすくなったり、火照ったりして、それに伴い頭痛が生じている場合に効果があります。自律神経を整え、頭痛を改善します。

3.大柴胡湯(だいさいことう)

こちらは市販薬としても売られていますが、高血圧や肥満をともなう頭痛や肩こり、胃炎、便秘、神経症、肥満症など、特異的な症状のある方に向いている漢方薬です。

4.釣藤散(ちょうとうさん)

ストレスによって血圧が上がりやすい方、気持ちが高ぶってしまうことで、頭痛が生じる方に向いている漢方薬です。早朝起床時の頭痛にも効果があるとされています。

「水分の滞り」から来る頭痛を治す漢方薬

身体がむくんだ時や、めまいとともに頭痛をおこす方は、身体の水分のアンバランスが原因になっているかもしれません。いわゆる「水滞」を改善させて頭痛を良くする漢方薬は、主に3つあります。

1.五苓散(ごれいさん)

例えば、お酒を飲み過ぎてしまい、翌日も抜けずに頭痛やめまいが生じるということはありませんか?

漢方医学の視点で考える場合、これは普段よりも多く水分を摂取し、自分の身体が水分を捌ききれずに残ってしまい、水分が滞っている状態と言えます。

余分な水分によって、不快な症状が出ているため、その水分の排出を促す漢方薬が五苓散です。

2.半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)

体力がなく、胃腸の弱い方で、めまいやふらつきを主な症状とする頭痛薬として用いる漢方薬です。冷え性など身体の水分の循環の良くない方に適しています。

3.当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

身体全体の血液のめぐりが悪くなってくると、水分も滞りやすくなり、それによってめまいや頭痛、冷え性や月経不順を伴う方に向いている漢方薬です。

「血液の滞り」から来る頭痛を治す漢方薬

血液のめぐりをよくすることで頭痛を改善させる漢方薬です。どちらかというと女性向けの漢方薬になります。

1.桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

血液のめぐりが滞っていることによって、月経不順である方、それに伴う頭痛に効果的な漢方薬です。血液のめぐりを良くし、体内の熱のバランスを整えます。それによって、冷えやのぼせを改善するほか、ホルモンのバランスを整える効果も期待できます。

頭痛が続いている方は早目の受診を!

慢性頭痛の場合は、普段の生活の中で、ストレッチをしたり、リラックスしたり、食事に気をつけたりと、予防する方法はたくさんあります。

頭の痛みが長引く、または急激に発症した頭痛の場合は、こうした慢性頭痛ではなく、脳腫瘍や、くも膜下出血などといった重篤な病気である可能性があります。急いで医師の診察を受けましょう。

一方で、頭痛が出た場合には、早目に薬を服用する方が効果的な場合もあります。自分にあった薬を見つけるのも、ひとつの方法です。

頭痛薬を処方してもらう場合は、神経内科や脳神経外科になります。希望すれば、こうした診療科でも漢方薬は処方していただけます。

また、頭痛に伴う様々な症状が気になっている場合、漢方内科を受診すれば、漢方の専門医からの診断のもとで診断を受けて、適切な漢方薬を処方してもらうこともできます。

また最近では、頭痛外来という専門の診療科を持っている病院もあります。近くに専門外来があれば、そうした診療科で詳しく診てもらうのも良いでしょう。

自分の頭痛の原因や症状に合わせた適切な薬を処方してもらい、快適に過ごせるようにしたいですね。

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