二日酔いの頭痛を治すなら頭痛薬。他の解消法は信憑性ゼロ?

日本がバブル景気に向かって一直線に駆け上り、とんねるずが「一気!一気!一気!」と暴れまわっていたあの時期に思春期だった筆者は、お酒の飲み方も時代を反映し、お酒にまつわるありとあらゆる失敗を重ねて来ました。

製薬会社の営業職(MR:医薬情報担当者)としてお酒がらみの仕事と翌日の二日酔いを数え切れないほど経験し、職業柄科学的な情報を調べることを生活の糧としてきた筆者が、 二日酔いの原因と頭痛薬をご紹介します。

実は二日酔いの原因ははっきりわかってない、という調査報告がある

今回、二日酔いによる頭痛の記事を書くにあたり、20年強のMR(医薬情報担当者)経験から得た医学、薬学知識と科学的情報の検索スキルを駆使して、そのメカニズムと解消法を調査しました。

二日酔いの頭痛解消法を調べるにあたり、そこで信頼出来ると感じた一つの文献に出会いました。

独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターの樋口進氏が書かれた「二日酔いの科学」です。

この「二日酔いの科学」によると、なんと二日酔いの症状は、なぜ起こるのかわかっていないというのです!

「二日酔い」の医学的定義も、頭痛がなぜ起こるのかもわからない

「二日酔いの科学」を読んでまず驚くことは、頭痛を含む二日酔いの症状がなぜ起こるのか明確には解明されていない、ということです。

そして、二日酔いの治療法がたくさんあるなかで、あやしげなものもある、ということが述べられています。

原因が分かっていないのであれば、確かに正しい対処法も見つけるのは困難だと思います。

樋口氏の論文を読んで次に驚いたのは二日酔いの定義や診断基準がない、ということです。

二日酔いの定義や診断基準がなければ、二日酔いに効くある治療法が開発されたとしても、その効果を検証するにあたり被験者を集めることもできませんし、「治った」と判定することも厳密にはできないのではないでしょうか。

それでも二日酔いの症状の原因候補はある。ただしあくまで研究中…

研究中であって確定しているものではありませんが、二日酔いの症状の原因の候補として上がっているものは存在します。

二日酔いメカニズムの候補:離脱症状

二日酔いは、アルコールが抜けていく時の離脱症状である、という考え方があります。二日酔いの時の自律神経症状は、離脱症状と似ていると前出の樋口氏は述べています。

二日酔いに伴う症状がアルコールの離脱症状だと考えると、二日酔いには迎え酒が効く、と一般的に言われていることが理にかなっているように思えます。

調べてみたところ、キリンビール株式会社さん作成の「お酒と健康 ABC辞典」という小冊子に迎え酒のことが書かれていました。

二日酔いの時に迎え酒をして症状が緩和するのは、「アルコールによる麻酔作用」であってごまかしである、とのこと。

さらに、迎え酒はアルコール依存症の一歩と考えられているとのことです。絶対やめましょう!

私自身の経験ですが、ひどい二日酔いの時は、お酒を見ただけでも気持ちが悪くなりますし、実際に迎え酒をしたことが1,2度ありますが、余計気持ち悪くなりました。

二日酔い時の脳波が離脱症状時のそれと異なることから、この説に異議を唱えている研究者もいるとのことです。

あなたはいかがでしょうか。もし経験がないのであれば、是非 迎え酒未経験のまま今後の人生をお過ごしください。

二日酔いメカニズムの候補:脱水

ビートたけしさんは俳優松方弘樹さんと2人で7升飲んだことがある、と言っていました。

水はある程度の量を飲むと「たぽたぽ」して飲めなくなりますが、お酒に強い人は大量のお酒を飲むことが出来ますよね。不思議ですね。

水は胃では吸収されないのですが、摂取したアルコールの20%は胃で吸収されるのです。

お酒を飲むとトイレが近くなるのは、大量にお酒(水分)を飲むからだと筆者は思っていましたが、実はホルモンが影響しているとのことです。

抗利尿ホルモン、別名バソプレッシンというホルモンがあります。このホルモンは腎臓での水の再吸収を増やすことで、作られるおしっこの量を少なくしています。

この抗利尿ホルモンが酩酊状態の時には減少するので、トイレが近くなります。おしっこの量が多くなるので体は脱水傾向になります。

二日酔いの状態の時は抗利尿ホルモンの量は増加しますのでおしっこの量はすくなくなります。

そして抗利尿ホルモンの変化量と二日酔いの重症度が関係していることが示唆されている、と前出の「二日酔いの科学」に紹介されていました。

脱水の重症度と二日酔いの重症度が相関しているのではなく、抗利尿ホルモンの変化量と二日酔いの重症度が相関しているというのです。

二日酔いメカニズムの候補:低血糖

糖代謝に関わるホルモンにインスリンとグルカゴンというものがあります。インスリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を上げます。

お酒を飲むとこれらのホルモンの分泌量が変化して低血糖になり、それが二日酔いの症状の原因の候補としても考えられています。

二日酔いメカニズムの候補:酸塩基平衡のアンバランス

酸塩基平衡のアンバランスが二日酔いの諸症状の原因であるとする説があります。

ではそもそも酸塩基平衡とは何かというと、液体の性質を現す言葉として、酸性、中性、アルカリ性という言葉を聞いたことがあると思います。

酸性、中性、アルカリ性はpH(ペーハー)という単位で現します。0から14段階まであり、0が最も酸性の強い状態であり、14が最もアルカリ性が強い状態です。中性は7で現します。

そして人間の体液(動脈血)はややアルカリ性(pH 7.35-7.45)の状態になっています。

体が酸性に傾いている状態をアシドーシス、アルカリ性に傾いている状態をアルカローシスと言います。

二日酔いの時、体液は酸性に傾いており、どの程度酸性に傾いているか、ということと二日酔いの重症度は関係があることが示唆されています。

なんとなく想像しただけでも具合が悪くなってきますね。

二日酔いメカニズムの候補:炎症

二日酔いの時、体が炎症を起こしていることが報告されています。この炎症が二日酔いの症状の原因だという説があるのです。

炎症は体に異常が起きた時の反応です。炎症が起きると、赤くなる(発赤)、熱が出る(熱感)、腫れる(腫脹)、痛い(疼痛)という症状が出ます。

いかがですか、二日酔いの時にこのような症状は出ますか。

炎症を抑える薬にNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる種類のお薬がありますが、このNSAIDsが二日酔いにある程度効果があるのは、二日酔いの時に炎症が起きているから、と説明がされています。

二日酔いメカニズムの候補:アセトアルデヒドの蓄積

お酒を飲むと肝臓で、アルコール(エタノール)がアルコール脱水素酵素によって酸化されてアセトアルデヒドになります。

このアセトアルデヒドには毒性があるため、一般的に二日酔いの原因物質はアセトアルデヒドであると言われています。

樋口氏の論文を読んで非常に驚いたことは、アセトアルデヒドと二日酔いが関係していることを示すデータが実際は非常に少ない、ということです。

二日酔いの時に、血液を検査してもアセトアルデヒドが検出されることは稀だと言います。

ただ、血液中に存在しないからと言ってアセトアルデヒドが二日酔いの原因ではない、とは言い切れないと思います。

血管を通り抜けて、アセトアルデヒドが細胞に移行し、そこで悪さをしている可能性はあるからです。

アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素という酵素によって酢酸に変換されます。酢酸は無害です。

そして、アセトアルデヒドを無害にする酵素の働きを阻害する薬があります。その薬の名前をアンタビュースと言います。

このアンタビュースはアルコール依存症の方に、飲酒をやめさせる目的で処方されることがあります。アンタビュースを飲んだ状態でお酒を飲むと、ひどい二日酔いに似た症状になります。

アセトアルデヒドの分解を阻害する薬を飲むんでお酒を飲むと、ひどい二日酔い(に似た)の状態になるのであれば、やはりアセトアルデヒドが二日酔いの症状の原因ではないか、と思いますが、樋口氏の論文にはそのことは触れられていません。う~ん。

二日酔いメカニズムの候補:その他

その他の原因としては、胃腸障害やお酒の不純物も考えられています。

確かに、飲む前に牛乳を飲むと胃の粘膜が保護されて悪酔いしない、ということも聞いたことがあるような気がします。

お酒の不純物、ということで考えると、日本酒、ワイン、ビールなどの醸造酒に比べて、ウイスキー、焼酎などの蒸留酒の方が不純物は少なそうに思いますが、醸造酒に比べて蒸留酒の方が二日酔いになりにくい、ということはないように思えます。

樋口氏の論文には胃腸障害やお酒の不純物に関しては「そういう説もある」という紹介程度にとどまっており、それ以上の詳しい情報はありませんでした。

二日酔いからくる頭痛に効く!MR筆者がおすすめする市販頭痛薬

二日酔いからくる頭痛がどのようにして起こっているのか、そのメカニズムの詳細は分かっていません。

でも、痛いのなら痛み止めを飲めば、その痛みは治まります。原因の二日酔いも時間が経てば解消します。

では市販されている痛み止めの薬を見ていきましょう。

イブプロフェンとロキソプロフェンが配合されている薬を選ぼう

私たちが医師の処方なしに購入できるお薬として、「一般用医薬品」があります。一方処方が必要なものは「医療用医薬品」と呼びます。そのままですね。

この医療用医薬品の中でも、長年の使用実績などから一般用医薬品としても販売されるようになったものが「スイッチOTC」という薬です。

スイッチOTCで認可された鎮痛成分は

  • イブプロフェン
  • ロキソプロフェン

の二つ。この二つが主成分として配合されている薬を選びましょう。

イブプロフェン
  • エスエス製薬「イブ」
  • ライオン株式会社「バファリン」
  • 大正製薬「ナロンエース」
  • 株式会社アラクス「ノーシン」
ロキソプロフェン
  • 第一三共ヘルスケア株式会社「ロキソニンSプレミアム」
  • ライオン株式会社「バファリンEX」

頭痛の症状を抑えるための市販薬については、こちらの記事でより詳しく、たくさんの種類を紹介しています。

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おすすめ頭痛薬。医薬情報担当者が市販薬を徹底比較

値段、服用間隔、副作用などの比較一覧表もありますので、是非ご覧ください。

二日酔いの頭痛が辛くて耐えられなかったら

お酒を飲まなければ二日酔いの頭痛で悩まされることはありません。分かりきったことですね。

でも、お仕事でどうしても飲まなくてはならないときもあるかもしれません。人生で最高に楽しい時間を過ごした結果二日酔いで頭痛になることもあるかもしれません。

二日酔いの原因は明らかにお酒、飲み過ぎです。しかし、なってしまったものは仕様がありません。辛くて耐えられない時には、なんとか対処しようと思うのが人間の性です。

ちまたでは様々な二日酔い症状の解消方法が紹介されていますが、ご紹介したように、そもそも二日酔いの症状がどのようなメカニズムで起こっているのか明らかになっていないのです。

また、科学的に検証された二日酔い解消方法というのも非常に限られています。

科学的な根拠の乏しい対処方法をご紹介するよりも、原因の解消はともかく、今ある痛みを確実に取り去ってくれる、しかも国から認可されている医薬品についてご紹介するほうが良いと考えました。

そして、医薬品の中でもご自身で選択できる一般用医薬品、さらにその中でも医療用と同じ成分が使用されているスイッチOTCの頭痛薬をご紹介しました。

今回あげた薬はどれもドラックストアで目にしやすいメジャーなものばかりです。

あぁ…二日酔いの頭痛が辛い…というときは、一度購入されてはいかがでしょうか。

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